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 2017年のワイン界の展望  2017年1月6日


【世界のワイン界】

ワイン市場やワイン界の変化というのは、毎年この年はこれというトピックがはっきりと表れるわけではありませんが、さりとてほとんど変化がなく安定的だとも言えないようです。

その一つの理由は、ワインの生産・供給サイドの事情があります。またワインを購入する消費者の消費行動が極めて大きくワイン市場に影響します。その消費行動の変化というのは、ワインマーケット参加者によってドライブされるという側面も強く持っていると言えます。

変化は局所的に表れる場合もあれば、ワイン界全体の傾向として見られることもあると思います。2017年は、2016年のヴィンテージのワインが多く市場に供給されることになりますが、もしかすると2017年は、局所的になるかもしれませんが、ワインの需給と価格が話題となることがあるかもしれません。

というのは2016年の世界のワイン生産量は、過去20年のスパンで見ても最低水準で、特に南米アルゼンチン・チリでは大幅な落ち込みとなりました。(アルゼンチン35%減、チリ20%減)フランスも10%以上の減産となって、全世界では2016年ヴィンテージでは5パーセント程度供給が減ると見られています。

恐らくは、全体的には極端な需給の乱れは起こらないと思いますが、近年のブルゴーニュの価格上昇傾向、あるいはバルクワイン市場など、局所的に価格と需給に注意が必要となる場面があるかもしれません。

ぶどうとワインの生産部門に影響を与えている大きな問題として、温暖化とそれによると見られる極端な気象変化があります。世界各地のワイン生産地で熱波や干ばつ、洪水、霜害、雹、病気の発生などによる大きな被害が報告されています。

こうした自然環境の変化は、ぶどうの品質と収量に直結しますから、結果としてワイン市場が大きく影響を受けることになります。

流通・消費に目を転じれば、世界のワイン市場で顕著な伸びを示しているのはアジアです。その中心は何といっても中国・香港ですが、基礎数は大きくないもののその他のアジア諸国も2017年はさらに大きな伸びが期待されると思います。

日本もその一翼を担うことになると良いと思いますが、2016年はかなり厳しい結果となったのではないかと思います。

2017年はTPPがどうなっていくのかも大きな関心ごとでしょう。また2国間の貿易協定であるEPAやFTAもワイン貿易には影響を及ぼすことになるでしょう。

実際のワイン貿易実務では、APEC域内でのワイン取引に関する非関税障壁を取り除くべく、検討が重ねられてきています。これは、APEC域内のワインの輸出入に関わる各国間の規制と手続きのフォーマットを統一化しようとするものですが、関税の廃止もさることながら、輸出入での実務における手続きの簡素化とコスト軽減が行われれば、ワイン貿易には大きなメリットとなることでしょう。


【日本のワインマーケット】

2016年の日本のワイン消費は、低価格帯のワインの消費は伸びたと思いますが、全体としてはかなり苦戦したという印象です。確たる数字をもって言っているわけではありませんが、現場感としてはそんな印象です。

もちろん個別の企業体では、好調な業績推移を見せたところも多かったと思いますが、カジュアルな価格帯以外のワインについては、全般的に消費者の反応が今一つだったように思います。特に業務用市場では苦戦したところもあったと思います。

日本の年間一人当たりのワイン消費は2リットル台後半です。これは世界で100番目くらいの消費量です。過去20年にわたって、日本のワイン消費は減りはしていませんが、さりとて増加トレンドが顕著かと言えば、なかなかそうは言い切れないというのが私の見方です。

メディアなどでは第〇次ワインブームというような見出しが躍りますが、確かに減ってはいませんから低位安定的と言えるかもしれませんが、20年というスパンで見ると、停滞しているという見方もできるかもしれません。

なぜ私がそう思うかというと、過去20年にわたって見て、日本においてはいまだにワインは一般的な日常の消費財にはなっていないと思うからです。ワイン業界におられる皆様は、日常的にワインと接し、ワイン中心に生活が回っていますから、そういう受け止めはないかもしれません。

しかしごく一般的な多くの消費者が、日常的にワインに親しんでいるかというと、確かに非常に熱心なコアなワイン消費者はいらっしゃいますが、圧倒的大多数の一般消費者はそうではないのだと思います。

少し大きな目で見れば、日本のワイン市場というのはゼロサムの中で動いている、ということができるのかもしれません。

ではこれまでワインにあまり親しんでいないごく普通の消費者が、ワインにはほとんど興味を示していないかというと、そんなことはないと思います。ただ日常、ワインとの接点がなく、どう接触したらいいかもわからずにいるというのが実際だと思います。

これまでもワインに接しない生活を送ってきて、特に不便や不都合を感じないわけですから、現状維持を打破するために、自らワインを求めて積極的に、能動的に動くということはなかなかないことだろうと思います。いつもの慣れ親しんだお酒で特に不満はありません。

しかし何かのきっかけでワインと接するようになった方々の中で、ワインの楽しさを知った方は、これまで以上のお酒の楽しみ・生活の楽しみを実感されることだと思います。

ですがそれを実感するためには、良いワインつまり自分に合ったおいしいと思えるワインと出会わなければなりません。ワインを購入するという行動が伴わないと、その消費者の口にはいつまでたってもワインは入らないということになりますから、いつまでたってもワインの楽しみを享受できないことになってしまいます。

2015年以来、チリワインが日本のワイン輸入のトップとなっています。これはチリワインのコストパフォーマンスの良さが消費者に認められた結果だと思います。またその背景には日本とチリとの貿易協定で、ワインの関税がゼロに近づいている価格的な側面が大きく指摘できると思います。

同様の貿易協定・EPA(Economy Partnership Agreement)が2015年、オーストラリアとの間で結ばれ、オーストラリアワインの関税が段階的に下がってきています。通常の日本のワイン関税は、輸入原価(CIF価格)に対して15パーセントですが、2017年4月からはオーストラリアワインについては7.5パーセントとなります。

日本の税法では、【輸入原価(CIF価格)+ 関税の合計額】に対し、酒税と消費税がかかりますから、関税が低くなるということは、そこで支払われる酒税と消費税額も少なくなります。これは市場の流通価格に反映されることとなるでしょう。

日豪経済連携協定による
ワインの関税率の推移
 2016年4月〜   9.40%
 2017年4月〜   7.50%
 2018年4月〜   5.60%
 2019年4月〜   3.80%
 2020年4月〜   1.90%
 2021年4月〜   0.00%
特恵関税の適用がない国からの日本のワインの輸入関税は、CIF価格に対し15%

オーストラリアワインへの関税は今後さらに下がり続け、2021年4月からは完全にゼロとなります。こうしたことを背景に、今年あたりから積極的なオーストラリアワインの導入が始まってくるかもしれません。オーストラリアワインは、世界市場では押しも押されぬ横綱格ですが、日本ではいまだに露出が少なく、その成長が期待されるところです。

現在日本とEUの間で、同様のEPAの交渉が続けられています。2017年にこれが同意されたり、合意に向けての強い進展が見られれば、ワイン部門にも大きなインパクトを与えることになるかもしれません。TPPのなりいき同様、EUとのEPAの進展を見守りたいと思います。


ワインには大きな可能性があります。まずは消費者との直接の接点である小売り業の取り組みが望まれます。またレストラン・バーも同様です。

どうやったらワインと消費者がつながるのか。ワインを並べておくだけでは、あるいはワインリストを見せるだけでは消費者はワインを手にしません。ここは少しだけ手をかけて、優しく消費者を導くというひと手間が必要です。

これはなかなか売り場の現場スタッフの力だけでは動かない部分です。経営者層・マネジメント層のワインビジネスへの理解と優れた戦略性が求められるところです。また日本のワイン界での人材育成は急務だと思います。そのもとで商品戦術・商品吟味・顧客対応・マーケティングが優秀な人材の下で楽しく展開されれば、必ずやワインは売れていくと確信します。

2017年はこうしたワイン流通の展開が、全国そこここで起こるようになりますことを、強く期待いたします。

ワールドファインワインズでは、皆様のサポートをさせていただいています。どうぞいつでもご遠慮なくご連絡ください。お待ちしております。

(伊藤嘉浩)



【関連ページ】

『2019年のワイン界の展望』
『2018年のワイン界の展望』

『2016年のワイン界の展望』
『2015年のワイン界の展望』
『2014年のワイン界の展望』

『環太平洋諸国間のワイン輸出入の手続き簡素化、大きく前進へーAPECで合意  2016年7月9日』

『ワインの購入で消費者が抱える大きな不満』
『ワインは売るのにそんなに難しい商品か』
『消費者からのワインに関する20の質問―ワインのプロが向き合うべき重要事項』

『専門用語を使わないでワインを売ってみる』
『ワインの専門用語の使用を考える』
『ワイン業界で使われる用語の問題』
『ワイン業界の人材育成の重要性と必要性』
『ワインプロフェショナルを目指す皆様への提言』

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